クルマの既成概念を超えたEVの先駆者。テスラ モデルSとモデルXに見る、まったく新しいモビリティ【Playback GENROQ 2018】

公開日 : 2021/06/06 17:55 最終更新日 : 2021/06/06 17:55

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テスラ モデルSの走行シーン

TESLA MODEL S × MODEL X

テスラ モデルS × モデルX

 

 

溢れる未来感

 

最初の市販車であるテスラ・ロードスターの登場から10年。その間にテスラは世界にさまざまな話題を提供し続けてきた。しかしクルマである以上、最も重要なのはプロダクトの仕上がりだ。モデルSとモデルXの2台を春の山に連れ出してみた。

 

テスラ モデルSの充電口

テスラ モデルSの充電口は左テールランプ内にさりげなく設置されている。100Dの場合はテスラスーパーチャージャーで約50分で満充電となる。

 

「テスラに乗ると、既成概念に捉われること自体が旧いのだと思わせる」

 

各自動車メーカーが“電動化”に向けた計画を次々に発表している現在。まだまだ先、と思っていた電気自動車が日々身近に感じられるようになってきている。シリコンバレー生まれの「テスラ」が新たに発表した「モデル3」は、アメリカでの車両価格が3万5000ドル(約380万円)から。従来モデルは日本で1000万円超えだったから、価格的にも現実的で身近な存在になりつつある。そこで、改めて既存のテスラ両モデルに試乗して、テスラの魅力を徹底解剖してみた。

 

まずはセダンの「モデルS 100D」。運転席に乗り込み、まず驚くのは“スイッチ類”がほとんどないことだ。その代わりに、センターコンソールにタブレット端末を縦置きしたような大きなモニターが居座る。すべての操作はこの画面を介して行う。実は私も、最初はヘッドライトのつけ方すらわからず困った。通常はステアリングの横側にスイッチがあるのだが・・・でもテスラに乗ると、このような既成概念に捉われること自体が旧いのだと思わせる。このモニターはスクロールやスワイプなど、スマホのように操作できるので、慣れれば使い勝手は良いだろう。

 

テスラ モデルSのインテリア

17インチという巨大なモニターを縦に配置するインパネは、テスラならではの独特の雰囲気。ドライバー正面のメーターもすべて液晶モニターとなっている。

 

「素材から走り味まで、全般的にサルーンとしての上質さを持つクルマだ」

 

スイッチ類がないのでコクピットはスッキリしていて、ホワイト&ブラックのレザー、そしてカーボン素材のシンプルでエッジの効いたインテリアが際立つ。スッキリしているのは運転席まわりだけではない。既存のパワートレインを持たないのでフロアは完全にフラット。この恩恵を受けるのがリヤシートだ。足元のスペースも十分だが、フロアがフラットだとこんなにも広々と感じるものなのか、と感心した。何より、中央の席に座る人も虐げられない。リヤシートには一切の収納スペースがないが、これもこだわりなのだろうか・・・。その代わりと言っては何だが、エアコン吹き出し口の所にUSBが二口装備されているのはさすが。

 

さて、走り出した印象は、とにかく滑らか。駆動系を介さない加速はシームレスで、力強い。上昇音を伴なわずに加速していくので最初はとまどうが、サルーンならこの静粛性の高さも快適さにつながる。ハイブリッドカーで思うことだが、エンジン音がなくなるとロードノイズや風切り音など、他の“雑音”が煩わしく感じる。だが、テスラはこの雑音も抑えられており、乗り心地も快適だ。段差を乗り越えた際も、重さを感じながらも不快な突き上げはない。ACCも試したが、加減速のみ、ステアリングのアシストありなどをチョイスでき、追従性も違和感がない。素材から走り味まで、全般的にサルーンとしての上質さを持つクルマだ。

 

テスラ モデルXの走行シーン

ボディサイズはかなり大柄だが、他ブランドのSUVと違って威圧感はまったくないモデルX。エアサスペンションにより車高は5段階に可変できる。

 

「テスラを造っている人たちは、ちゃんと自動車がわかっている」

 

続いてはSUVの「モデルX 100D」。ルーフまで広がるフロントウインドウやリヤのファルコンウィングドアが独自性をアピールする。リヤゲートも含めてドアは高く跳ね上がるが、低い位置に開閉スイッチがあり、さらにオートクロージャーが装備されるので乗降性や使い勝手は良い。そしてウッド&レザーのインテリアも質感は十分。

 

こちらの乗り味はモデルSに比べるとやや荒削りな感じ。とはいえ、ハンドリング性能は抜群だ。普通に走っていても低重心であることを実感させる安定感があり、かつ気持ちよく走れる。

 

電気自動車はコモディティ化してしまうのではないか?という不安もあったが、テスラに乗るとそれが払拭された。低重心、前後重量配分50対50というパッケージングを今回の2台は実現している。スポーツカーでもないのに、だ。それでいて、セグメントなりの異なる個性があるし、モードの選択で加速感も変更できる。強いて気になる点を言えば、サウンドによる官能がないことぐらいか。しかし、静かだとドライブ中にストレスを感じないのも事実。いずれは、あえてサウンドをつけた電気自動車、なんてものも出てくるかもしれないが・・・。少なくとも、テスラに関して言えばちゃんと「自動車」をわかっている人が造っている、という印象だった。

 

テスラ モデルXのドアオープンシーン

リヤのファルコンドアを含めた4枚のドアはすべて電動開閉式。室内スペースは広く、3列目シートを備えた仕様を選択することもできる。

 

「インフラが整備されて充電の不安がなくなれば、是非とも乗りたい」

 

電気自動車の2大難点は、航続距離の短さと充電時間だが、今回の2台のバッテリー容量は100kWhで、航続距離は約600kmと十分。専用の充電設備も徐々に増えつつあるが、これは住環境やクルマを使う場所によって印象が大きく異なるだろう。ちなみに今回は充電も行ってみたが、高出力のテスラスーパーチャージャー(120kW)では約50分で満充電に。CHAdeMO(44‌kW)による30分の急速充電ではバッテリー容量が58%から78%へ。そして、家庭用普通充電(3kW 200V)では16時間の充電で78%から98%となった。

 

600kmの航続距離があれば安心してロングドライブができるが、たくさん走ればその分、長時間の充電を行う必要も生じる。充電器設置場所を確認し、また時間に余裕を持った計画を立てれば、長距離でも煩わしさを感じずに付き合うことができるだろう。私自身のライフスタイルで言えば、住んでいるマンションに充電設備がなく、ほぼ毎日クルマ移動をしているので辛い。しかしインフラが整備されて充電の不安がなくなれば、是非とも乗りたい。そう思わせるほど魅力のあるクルマだ。

 

 

REPORT/佐藤久実(Kumi SATO)
PHOTO/宮門秀行(Hideyuki MIYAKADO)

 

 

【SPECIFICATIONS 】

テスラ モデルS 100D

ボディサイズ:全長4979 全幅1950 全高1443mm
ホイールベース:2960mm
車両重量:2106kg
モーター最高出力:193kW(262ps)
モーター最大トルク:525Nm(53.5kgm)
トランスミッション:1速固定
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後245/45ZR19
航続距離:632km
0-100km/h加速:4.3秒
車両本体価格:1203万8000円

 

テスラ モデルX 100D

ボディサイズ:全長5052 全幅1999 全高1684mm
ホイールベース:2965mm
車両重量:2459kg
リヤモーター最高出力:375kW(262ps)/6150rpm
リヤモーター最大トルク:660Nm(53.5kgm)
フロントモーター最高出力:193kW(262ps)/6100-6800rpm
フロントモーター最大トルク:330Nm(53.5kgm)
トランスミッション:1速固定
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前265/45R20(9.0J) 後275/45R20(9.5J)
航続距離:565km
0-100km/h加速:4.9秒
車両本体価格:1241万円

 

 

※GENROQ 2018年 6月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

 

 

【関連リンク】

・GENROQ  2018年 6月号 電子版

※雑誌版は販売終了