魅惑のオープン・フェラーリ「ポルトフィーノ M」国内初試乗! 最も身近なフェラーリの感触を確かめる

公開日 : 2021/06/22 17:55 最終更新日 : 2021/06/22 17:55

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フェラーリ ポルトフィーノ Mの走行シーン

Ferrari Portofino M

フェラーリ ポルトフィーノ M

 

 

極まる柔と剛

 

フェラーリ初のV8FRクーペカブリオレとして2009年に登場したカリフォルニア。その後2017年に後継車のポルトフィーノへと生まれ変わった。そして今、その進化版であるポルトフィーノ Mの登場である。V8ツインターボは620psへとグレードアップし、新たに8速DCTも組み合わされた。“最も身近なフェラーリ”の感触を早速確かめよう。

 

フェラーリ ポルトフィーノ Mの走行シーン

シートにはネックウォーマーが設定され、冬のオープン走行が快適になった。リヤシートは荷物置きとしても有益だし、背もたれを倒してトランクスルーも可能。

 

「日常域で楽しむフェラーリの最新モデルを味わう」

 

クルマのことをよく知らない人でさえ認識している頂点のブランド。フェラーリとはそういう存在だ。その地位は一朝一夕には手に入らない価値あるモノだが、裏返せば「近付き難い」というイメージを持たれてしまう面もあるのは否めない。2009年に発売されたカリフォルニアは、そんなフェラーリへの心理的な敷居を下げ、幅広いオーナーに間口を開いた。V8エンジンでFR、流麗なスタイルのクーペカブリオレ、快適性も重視したシャシーセッティング、狭いながら後席も備えた実用性の高さなど、カリフォルニアが示した「日常域で楽しむフェラーリ」は多くの人に受け入れられた。フェラーリは昔からGT的マシンをラインナップしてきたが、カリフォルニアは価格的にも(フェラーリの中では)求めやすかったことも、人気を呼んだ要因だろう。

 

カリフォルニアは14年にダウンサイズターボを初搭載したカリフォルニア Tへと進化し、さらに17年には後継車のポルトフィーノが誕生する。そして今回、日本に初上陸したのがその進化版となるポルトフィーノ Mだ。Mはモディフィカータ(モディファイ)を表し、過去にもフェラーリが使用してきた称号。このようにファンの心をくすぐるフレーズを用いるのも、伝統と人気のあるブランドだからこそ為せる技だ。

 

フェラーリ ポルトフィーノ Mのエンジン

バルブリフト量アップやターボチャージャー速度センサー導入などで、従来比20psアップとなる620psを実現した3.9リッターのV8ツインターボエンジン。

 

「モデルチェンジの背景には兄弟車であるローマの存在を感じる」

 

登場からおよそ3年でのビッグマイナーチェンジとなるが、その背景には兄弟であるローマの存在が大きい。今回ポルトフィーノ Mに搭載されたエンジンやトランスミッションなどはローマのそれと同様であり、GPF(ガソリン・パーティキュレート・フィルター)を採用してユーロ6dに適合した最新V8ユニットである。もちろん環境性能を満たしただけでなく、性能もしっかりと上げてきているのは当然だ。3.9リッターのV8ツインターボはタービンにスピードセンサーを追加、速度マージンを最小化することで1分あたりの最高回転数が5000rpm向上。また吸排気バルブを中空にして軽量化しバルブリフトを1mmアップさせ、燃焼速度の向上やシリンダー内流動を改善、パワーやレスポンスのアップとGPFの影響を相殺している。

 

性能はポルトフィーノより20psアップの620ps、トルクは変わらずの760Nm。ターボエンジンは性能の差を付けるのがNAよりも遥かに楽なはずだが、フェラーリはこのV8ツインターボを毎年のようにモデルに合わせて細かく中身を改良している。こんなところに、フェラーリのエンジンに対するこだわりとプライドが感じられる。

 

フェラーリ ポルトフィーノ Mのインテリア

インパネ周りのデザインはポルトフィーノから大きな変化はないが、マネッティーノが5ポジションに増えている。また、最新のADASがオプションで装着できるようになった。ACCや自動緊急ブレーキ、レーンデパーチャーウォーニングなど6つの安全支援機能を持つ。

 

「タコメーターが針というのは昭和世代にはやはり嬉しい」

 

トランスミッションは従来の7速から8速へと進化。この8速DCTも最高入力速度が9500rpmから1万rpmに、最大入力トルクは750Nmから900Nmに、インプットシャフト高が30mm下がって重量は6kg軽量化、ギヤチェンジ速度も短縮するなど、単に段数が増えただけではない。

 

エクステリアは前後バンパーを一新。フロント両脇のエアインテークがよりダイナミックな形状となり、ボディサイドのエアアウトレットと一体感のあるスリットも追加された。インテリアはポルトフィーノから大きな変化はない。ローマやF8 トリブートなどはフルデジタルのメーターやタッチスイッチ式ステアリングを採用しているのでひと世代前という感じはあるが、逆にアナログメーターがある方が好みという声も多いはず。ボク自身、ローマよりもポルトフィーノ Mの方が各部の操作に戸惑わずに済んだのは本当だし、タコメーターが針というのは昭和世代にはやはり嬉しいものがある。

 

今回の試乗ステージは横浜市内。ポルトフィーノ Mの性格を考えれば峠やサーキットよりもふさわしいだろう。事実、走り出してまず感じたのはそのスムーズさと快適さだった。スタートから加速していってもギヤチェンジは完全にシームレスでショックはほぼ皆無。路面は決して綺麗な状態ばかりではなかったが、乗り心地も非常に快適だ。

 

フェラーリ ポルトフィーノ Mの走行シーン

フロントバンパーとリヤディフューザー周りが一新された。よりダイナミックな造形となり、エアロダイナミクスも向上している。

 

「街中での上品さはサルーンにも引けを取らないレベル」

 

フロントサスペンションのスプリングはローマと同じだがダンパーのセッティングが異なる、という説明があったが、ややゴツゴツとした印象もあるローマに比べると明らかに細かな振動を滑らかに吸収してくれる。その分、リヤは振動の収束がやや遅れる感じもあるが、これはカブリオレというボディ形態が影響しているのだろう。いずれにしても街中での上品さはサルーンにも引けを取らないレベルだ。

 

加速していくと、8速DCTはポンポンとシフトアップしてすぐに7速あたりに到達してしまう。当然エンジン回転は1500rpmくらい、というレベルなのだが、F154ユニットは坦々と必要なパワーとトルクを供給する。低回転域での扱いやすさはとても7500rpmで620psを絞り出すエンジンとは思えないほどで、そこから僅かに右足に力を込めれば瞬時に力強くクルマを前に押し出す。このフレキシブルさ、GTカーには最高のエンジンだ。

 

フェラーリ ポルトフィーノ Mのリヤスタイル

バンパーレベルから開くラゲッジスペースは292リットルという広さを持つ。オープン時にルーフを収納するときは若干狭くなる。

 

「官能的な音を全身で浴びる。これはオープンカーの特権だ」

 

首都高速に入り、速度を上げるとポルトフィーノ Mはまた違う一面を見せてくれた。エンジンサウンドは2レベルほど甲高くなり、官能的な音を響かせる。これを全身で浴びることができるのはオープンカーの特権だ。パドルシフトによるギヤのアップダウンは電光石火、エンジンは右足のmm単位の動きにも瞬時に反応する。これが本当にターボか、と思ってしまうほどで、つい無駄にギヤチェンジを繰り返してしまう。空いたトンネルに入ったところでちょっとアクセルを強めに踏んでみたら、ターボラグなど一切なしのレスポンスと強烈な加速、そして何より響き渡る甲高いエキゾーストノートに思わず笑顔になってしまった。

 

快適なGTであり本格スポーツマシン。マネッティーノにレースモードが追加されたことが表すように、ポルトフィーノはMになってその柔と剛の振れ幅をさらに大きくしてきた。これこそ、フェラーリロードカーのひとつの理想の形なのだろう。

 

 

REPORT/永田元輔(Gensuke NAGATA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOABYASHI)

掲載雑誌/GENROQ 2021年 7月号

 

 

【SPECIFICATIONS】

フェラーリ ポルトフィーノ M

ボディサイズ:全長4594 全幅1938 全高1318mm
ホイールベース:2670mm
乾燥重量:1545kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3855cc
最高出力:456kW(620ps)/5750-7500rpm
最大トルク:760Nm(86.7kgm)/3000-5750rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ:前245/35ZR20 後285/35ZR20
0-100km/h加速:3.45秒
最高速度:320km/h
車両本体価格:2737万円

 

 

【関連リンク】
・フェラーリ・ジャパン 公式サイト
http://www.ferrari.com/ja_jp/