スーパー・ライトウェイト・スポーツカーの新たな指針。ACゼノス E10を公道で試す! 【Playback GENROQ 2020】

公開日 : 2021/06/25 17:55 最終更新日 : 2021/06/25 17:55

ACゼノス E10の走行シーン

AC Zenos E10

ACゼノス E10

 

 

超軽量の新定義

 

元ロータスとケータハムのメンバーが中心となり、それぞれの分野のスペシャリストの協力を仰いで生み出されたACゼノスE10は、かつてロータス・セブンが切り開いたスーパー・ライトウエイト・スポーツ・シーンの新たなベンチマークになろうとしている。

 

ACゼノス E10のインテリア

運転席前の小モニターには、速度、回転、ギヤの情報のみを表示。センターのモニターにはそれに加え、燃料、水温、油圧、電圧が表示される。

 

「“打倒セブン”に対する現時点での最適解のひとつが、このACゼノス E10だ」

 

1957年に登場したロータス セブンは、スポーツカーの世界に“スーパーライトウエイト”という定義を初めて持ち込んだ金字塔というべき1台である。

 

以来、様々なメイクスが求め、試行錯誤してきた“打倒セブン”に対する現時点での最適解のひとつが、このACゼノス E10だ。

 

ACゼノス E10のルーフ

ノーマルはフロントスクリーン・レス(!)。オプションのウインドウ付き仕様には簡易的な幌が装備されるので実用性はわずかに高くなる。

 

「元ケータハムのCEOが舵を取るACゼノス」

 

ゼノス・カーズは2012年にイギリス・ノーフォークに設立された新興のスポーツカーメーカーである。そのCEOに就いたのはアンサー・アリ。エンジニアとしてフォードでキャリアをスタートした後、大学に戻ってMBAを取得しフォード、ロータスのマネージメントに携わり、2005年からケータハム・カーズの社長に就任したという異色の経歴の持ち主だ。その彼がケータハムを離れ、ロータス時代の同僚であるマーク・エドワーズとともにスポーツカーのレヴォリューションを目指して生み出したのがE10である。

 

ちなみに2017年に破綻が伝えられたゼノス・カーズだが、ACコブラを製作するACカーズが買収し、ACゼノスとして再スタート。経営基盤が強固となったことで、パーツ供給などサポート体制も安定したのはむしろ朗報と言えるだろう。

 

ACゼノス E10のサスペンション

特徴的なフロントのインボード・サスなど足まわりを担当したのは、アストンマーティンOne-77やフォードGTのシャシーを開発したカナダの名門、マルチマティックだ。

 

「“走り”においてE10には一切の妥協は見られない」

 

全長3800mm、全幅1870mmとロータス エリーゼとほとんど変わらないコンパクトな車体には、オーディオやエアコンといった快適装備はもとより、トラクションコントロールやABSといった電子デバイスの類も一切ついていない。取材車にはオプションのアルコン製フロント4ポット・ベンチレーテッドディスクブレーキが奢られていたが、ブレーキサーボすら付いていないのである!

 

しかしそれ以外の部分、つまり“走り”においてE10には一切の妥協は見られない。

 

中でも象徴的なのがサスペンションだ。理想的なロードホールディングとバネ下重量の低減を実現するため、フロントにまるでフォーミュラカーのようなロングアーム・ウィッシュボーンと、プッシュロッド式の縦置きインボード・スプリング&ダンパー・ユニットを奢っている。

 

ACゼノス E10のタイヤ

取材車はフロントにオプションのアルコン製4ポット・ディスクを装着。踏力を必要とするものの、コントローラブルでハード・ブレーキングをしても姿勢がブレず安定していた。

 

「安全性にしっかりと配慮がなされているのも見逃せないポイント」

 

シャシーはアルミ押し出し材によるバックボーン式なのだが、そこに被さるコクピットシェルには、アルミ・ハニカムをリサイクル・カーボンでサンドイッチした最新のマテリアルが使われている。またドアやサイドウインドウはないものの、ボディの内側とフロントウインドウ・フレームに強固なロールケージが張り巡らされるなど、安全性にしっかりと配慮がなされているのも見逃せない。

 

そのほかにもタイタンのアップライト、ビルシュタインのダンパー、エイヴォンのタイヤなど各分野のエキスパートによる専用パーツが惜しげもなく注ぎ込まれているのもE10の特徴といえる。

 

ACゼノス E10のエンジン

横置きミッドのエンジンは、本国では2.0リッターターボのE10Sの方が人気だというが、日本仕様は2.0リッターNAのE10がメイン。200psながら、軽い車重と6速MTとの相性がよく、サーキットでも十分以上のパフォーマンスを誇る。

 

「軽やかに6000rpmオーバーまで回るレスポンスの良さと、扱いやすさが真骨頂」

 

横置きミッドシップのエンジンは202psにファインチューンしたフォード フォーカスの2.0リッター直4GDI。253psのフォード・エコブースト2.0リッター直4ターボを搭載したE10Sもラインナップされているが、シャシーに変わりはない。ちなみに開発過程のテストでは600psのエンジンを搭載してもシャシーに補強の必要はなかったそうだ。

 

試乗したのは202psのE10だが、軽やかに6000rpmオーバーまで回るレスポンスの良さと、扱いやすさ、そしてフロントスクリーンなどのオプションを備えた試乗車でも800kgに満たない車重の軽さもあって物足りなさはまったく感じない。また目立つような空力デバイスや、リヤディフューザーなどがないにもかかわらず、高速ではピターっと安定するのは、シャシーのバランスと、ボディのエアフローが良いからなのだろう。

 

ACゼノス E10のシート

前後のみ調節可能のバケットシートはレザー張りなどのオーダーも可能。日本仕様のギヤボックスは6速MTのみ。センターに小物入れも備わる。

 

「そのドライブ感覚はミッドエンジン・フォーミュラカーに非常に近い」

 

バックスキンが巻かれた小径のステアリングは、中立付近の遊びもなくダイレクトでクイック。走り出しは軽い印象だったが、ペースをあげオプションのエイヴォンZZRに熱が入ると手応えが増してくる。

 

正直にいうとE10のシャシーポテンシャルの全てを公道で引き出すのは不可能だ。最初は、何も電子デバイスがないこともあり、ジャジャ馬的な乗り味を想像していたのだが、ステアリングに対する応答性、コーナーに入ってからの安定性、オン・ザ・レール感は生半可ではない。その感覚はFJ1600のような空力デバイスを持たないミッドエンジン・フォーミュラカーに非常に近いといっていい。

 

ACゼノス E10のリヤスタイル

オーソドックスなFR的なシェイプと未来的のデザインが融合したE10。ブルーの個体は250psにチューンした2.0リッターNAやドライバーに合わせロールバーを低くするなどのモディファイを施したゼノス・カーズ・ジャパンのテスト車両。

 

「ACゼノス E10は、“ポスト・セブン”にふさわしい1台だ」

 

驚くべきは、それだけのパフォーマンスをもちながら、街乗りでも扱いやすい、ドライバーフレンドリーなバランスのいいスポーツカーに仕上げられているということだ。

 

そういう意味でもACゼノス E10は、“ポスト・セブン”にふさわしい、21世紀のスーパー・ライトウェイト・スポーツカーの新たなベンチマークになる1台といえそうだ。

 

 

REPORT/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)
PHOTO/前田惠介(Keisuke MAEDA)

 

 

【SPECIFICATIONS】

AC ゼノス E10

ボディサイズ:全長3800 全幅1870 全高1130mm
ホイールベース:2300mm
車両重量:750kg
エンジン:直列4気筒DOHC
総排気量:1999cc
最高出力:148kW(202ps)/6800rpm
最大トルク:210Nm(21.4kgm)/6100rpm
トランスミッション:6速MT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前インボード・ダブルウィッシュボーン 後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ソリッドディスク
ディスク径:前300 後280mm
タイヤサイズ:前195/50ZR16 後225/45ZR17
車両本体価格:699万8400円
※取材車はオプション装着車

 

 

※GENROQ 2020年 6月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

 

 

【関連リンク】

・GENROQ  2020年 6月号 電子版

※雑誌版は販売終了