ランドローバーのフラッグシップ「レンジローバー SV P530」を雪上で試乗

2500万円の高級SUV「ランドローバー レンジローバー SV P530」はやっぱり雪上でも無敵だった

プレミアムSUVの元祖「レンジローバー」で裏磐梯の雪山を訪れた。グレードは「SV P530」である。
プレミアムSUVの元祖「レンジローバー」で裏磐梯の雪山を訪れた。グレードは「SV P530」である。
最近人気のプレミアムSUVが言う”プレミアム”とは何か? 元祖プレミアムSUVである「レンジローバー」、そのトップ・オブ・トップである最上級グレード「SV」で雪深い山道を走って考えた。

LAND ROVER RANGE ROVER SV P530

五感を満足させることと所有する喜び

速く走らせるよりも、美しく走らせてナンボだと感じるのがレンジローバーの真骨頂である。
速く走らせるよりも、美しく走らせてナンボだと感じるのがレンジローバーの真骨頂である。

高級車を語る際に考えさせられるのが、「なにをもって高級と定義するか?」ということだ。

まず頭に浮かぶのは静粛性の高さと快適な乗り心地で、そりゃあもうマストでしょう。馬車の場合は、4頭仕立て、8頭仕立てと、馬の数が増える(=パワフルになる)ほど高級だとされた。馬車の末裔がクルマで、特に欧米の人には「高級=パワフル」だと刷り込まれているから、高級車にパワフルな動力性能は不可欠。遅い高級車はあり得ない。掛け心地のよいシートや色艶のよいレザーで五感を満足させることも大切だし、素敵なエクステリアデザインで所有する喜びを与えることも重要だろう。

ただしここまでは、できてあたりまえの規定競技、フィギュアスケートでいえばショートプログラムだ。「高級」や「プレミアム」を標榜するブランドであれば、ラクラク達成して当然だろう。そこから先のフリー競技で、そのブランドにしか表現できない高級が明らかになるはずだ。

というわけで、プレミアムSUVが百花繚乱のいま、このカテゴリーの元祖である「レンジローバー」を、裏磐梯の雪山に連れ出した。グレードは「SV P530」で、すでに当サイトで紹介済みであるからモデル詳細は省くけれど、ジャガー・ランドローバー社のSVO(スペシャル・ヴィークル・オペレーション)が仕立てたトップ・オブ・トップ、最上級のレンジローバーである。

大吟醸を一気飲みする人はいない

都心から首都高速、東北自動車道、磐越自動車道を経由するドライ路面でのパフォーマンスは、文句のつけようがない。BMW製4.4リッターV型8気筒ツインターボエンジンは、巡航時は死んだフリをしているかのように気配を消す。いっぽうで、アクセルペダルを踏み込むと、間髪入れずに心地よい音と加速を提供してくれる。ただし、ドーンと踏んでダーッと加速する、みたいな下品な操作は避けたくなる。というのもこのエンジンは、繊細な回転フィールを味わいたくなるからだ。おいしい大吟醸酒を一気飲みする人がいないように、このクルマのアクセルペダルは丁寧に扱いたい。

丁寧に操作したくなるのはハンドルも同じで、高速道路での車線変更レベルの操舵でも、ダーッと無造作に切るのではなく、早め早めに、じわじわと操作したくなる。そうすると、一瞬のタメがあってから、しなやかにロールして、きれいなフォームで車線変更が完了する。

パワーは十二分だし、サイズや重量から想像するよりはるかに機敏にコーナーを曲がる。だからいわゆるスポーツドライビングにも応えてくれるけれど、このクルマは速く走らせるよりも、美しく走らせてナンボだと感じる。

どんな路面でも盤石の安定感を見せる

高速道路を降りて、桧原湖へ向けて標高が上がるにつれて、路面はドライから雪解け水が流れるウェット、シャーベット状の路面、そして圧雪へと変化する。もちろんスタッドレスタイヤの手柄でもあるけれど、どんな路面でもレンジローバーは盤石の安定感を見せつける。

特筆すべきは、ところどころに雪の吹き溜まりがあったり、深い轍があったりしても、繊細な操作フィールを失わないことだ。ただ滑らずにグリップして走るだけでなく、タイヤがどんな具合に路面と接しているのかを詳細に伝え、心地よく走ることができる。

自分を紳士に引き上げてくれること

今回の取材のために用意したクローズドコース走ると、前述したようにジムカーナ的な走り方にもしっかり応答してくれる。しかもジムカーナっぽく走ると、どうしても焦って操作が雑になるはずなのに、このクルマは落ち着いた心持ちでドライブできる。それはハンドル、アクセル、ブレーキを操作した時に、巨大なボディの隅っこまで自分の手のひらと足の裏で把握していると実感できるからだ。

レンジローバーに乗っていると、自分が知的で、繊細で、上品で、でもいざとなればスポーツ万能の紳士にも変身できると錯覚することができる。そして普段はしょうもないおっさんである自分を紳士に引き上げてくれることこそが、ほかのクルマとは異なるレンジローバーの高級だと確信した。

REPORT/サトータケシ(Takeshi SATO)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)、GENROQ Web

SPECIFICATIONS

ランドローバー レンジローバー SV P530

ボディサイズ:全長5065 全幅2005 全高1870mm
ホイールベース:2995mm
車両重量:2680kg
エンジン:V型8気筒DOHCターボ
総排気量:4394cc
最高出力:390kW(530PS)/5500-6000rpm
最大トルク:750Nm(76.5kgm)/1850-4600rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後285/40R23
車両本体価格:2568万円

ボディはスタンダードホイールベース(SWB)、ロングホイールベース(LWB)の2種類。パワートレインは4.4リッターV8ガソリンターボのP530と3.0リッター直6ガソリン+モーターのPHVであるP510e。後者はSWBのみとなる。

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