【フェラーリ名鑑:39】1030PSのハイパーカー「SF90XXストラダーレ」「SF90XXスパイダー」

新時代「XX」として登場した「SF90XXストラダーレ」「SF90XXスパイダー」が持つ意味【フェラーリ名鑑:39】

開発プロジェクトは、スパイダーも含めてベースの「SF90」と同時にスタートしたという「SF90XX」。
開発プロジェクトは、スパイダーも含めてベースの「SF90」と同時にスタートしたという「SF90XX」。
一般道ではなく、純粋にサーキットドライブを楽しむための「XX」シリーズは、フェラーリにとって特別なカテゴリーだ。その「XX」の名を与えられた「SF90XX」ベースのスペチアーレ「SF90XXストラダーレ」と「SF90XXスパイダー」を紹介する。

SF90XX Stradale / Spider

フェラーリにとって特別な「XX」

約14秒でルーフの開閉が可能なSF90XXスパイダー。

オンロードでの走行が可能なストラダーレでも、そしてレース参戦を目的としたコンペティツィオーネでもない、まさに過去に例を見ない1台のモデルをフェラーリが初めて披露したのは、2005年のボローニャ・モーターショーでのことだった。「FXX」とネーミングされたそれは、フェラーリが2002年に発表した限定生産を前提としたプレミアムモデル「エンツォ」をベースとしたもので、さらに空力特性を高めたボディや、ミッドに搭載されるパワーユニットの性能は、いずれもエンツォのそれを超越したものだった。生産台数はわずかに29台(後にミハエル・シューマッハのために30台目のエンツォが製作されるが)。

幸運にもそのオーナーの座を射止めたカスタマーには、「カスタマーテストドライバー」、あるいは「ピロータFXX(FXXドライバー)」の称号が与えられ、オフィシャルイベントではフルサポートでのサーキットドライブを楽しめた。その引き換えとしてフェラーリは走行データをそれぞれのFXXから入手。それを新型車開発に活用するというシステムもまた確立されていた。

XXシリーズはその後「599XX」「FXX K」へと進化を遂げていくが、いわゆるサーキット走行専用車という位置づけは変わることはなかった。それに大きな変化が訪れたのは昨2023年の6月、「SF90XXストラダーレ」と「同スパイダー」が発表された瞬間だった。

本来のXXはすでにその目的を達した?

前者は799台、後者は599台とこれまでのXXシリーズと比較すると、限定車ではあるものの、大幅にその生産台数を増加させた最新版のXX。実際のデリバリーはクーペのストラダーレの方が半年ほど早く2024年6月以降には始まる予定だが、まず触れなければならないのは、今回のXXモデルはオンロードでの走行を可能としていることだろう。

それはサーキット走行に特化した本来のXXは、すでにその目的を達したという意味なのだろうか。一連のXXシリーズを見てきた者にはそう感じられても不自然なことではない。

SF90XXの開発プロジェクトは、スパイダーも含めてベースの「SF90」と同時にスタートしたという。SF90自体、4.0リッターV型8気筒ツインターボエンジンに加え、エンジンと8速DCT間に1基、またフロントアクスルに2基のエレクトリックモーターを搭載し、986PSの最高出力を得たハイパワーマシン。それからさらにチューニングの可能性を模索するには相当な努力が必要と考えられるが、フェラーリはまずV型8気筒エンジンに新型ピストンや特殊な機械加工を施した燃焼室を採用。一方で二次空気導入装置を廃止したことなどで19PSのパワーアップと3.5kgの軽量化を果たすことに成功している。

システム最高出力は1030PS

エレクトリックモーターに関しても、最高出力は各々12PSのアップ。結果システム全体の最高出力は1030PSという数字を掲げることになった。バッテリーの搭載量は7.9kWhのまま変化はなく、EV走行距離も最大25km、最高速は135km/hをキープしている。走行モードで「クオリファイ」を選んだ時にエレクトリックモーターによる新たなパワーブースト機能が働くようになったのも、このXXモデルのメカニズムでは大きな特徴。ブレーキシステムもさらに強化され、ディスクの大型化や新型のABS EVOコントローラーなどが採用された。

エクステリアデザインも、さらにアグレッシブなものになった。再設計されたフロントスプリッターから導かれるエアがボディ下面で生み出すダウンフォースは、SF90からさらに45kg増。リヤに固定式のウイングを装着したのは、じつにあのF50以来のことになるという。車体全体で250km/h走行時に発生するダウンフォースは、フェラーリによれば530kgという大きさに達する。

インテリアも軽量化を意識して、カーボンやアルカンターラを多用したフィニッシュ。ちなみにスパイダーは約14秒でルーフの開閉が可能であるということだ。サーキットからオンロードへと飛び出した最新のXX。発表時に明らかにされた価格は、ストラダーレが77万ユーロ、スパイダーは85万ユーロというものだった。

SPECIFICATIONS

フェラーリSF90 XX ストラダーレ

ボディサイズ:全長4850 全幅2014 全高1225mm
ホイールベース:2650mm
乾燥重量:1560kg
エンジン:V型8気筒DOHCターボ
圧縮比:9.54:1
総排気量:3990cc
最高出力:586kW(797PS)/7900rpm
最大トルク:804Nm(82.0kgm)/6250rpm
モーター 最高出力:171kW(233PS)
バッテリー 容量:7.9kWh
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前255/35ZR20 後315/30ZR20
最高速度:320km/h
0→100km/h加速:2.3秒

全長4973×全幅2028×全高1589mm、ホイールベース3018mmという堂々たるサイズを誇る「プロサングエ」。

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著者プロフィール

山崎元裕 近影

山崎元裕

中学生の時にスーパーカーブームの洗礼を受け、青山学院大学在学中から独自の取材活動を開始。その後、フ…