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Porsche 911 Dakar
1万km以上のオフロードテストを実施
「911 ダカール」のネーミングは、1984年にポルシェとして初めて4輪駆動システムを搭載した953(のちの959)が、レネ・メッジのドライブで優勝したことから名付けられた。
プロジェクトマネージャーのアキム・ランパータを中心とする開発チームは、ヴァイザッハのオフロードテストトラックでの集中的なテストだけでなく、道なき道を求めて世界中で走行を行っている。
今回、1万km以上のオフロード走行を含む、50万km以上ものテストプログラムを実施。WRC(世界ラリー選手権)チームのグラベルテスト地としておなじみ、南フランスのシャトー・ラストゥールでは、典型的なラリーコースでにおけるハンドリングテストと、サスペンションのセットアップが行われた。何kmも続く厳しいグラベル路面は、911 ダカールに厳しい負荷を与えることになった。
当初、ポルシェのワークスドライバー、ロマン・デュマはシャトー・ラストゥールで911をドライブすることに戸惑いを感じたという。しかし、走行後すぐに、911 ダカールのオフロード性能への賞賛へと変わった。剛性を高めたシャシー設計と、引き上げられたライドハイトのおかげで、ちょっとしたジャンプさえもこなしてしまう。さらに、デュマは華麗なグラベルドリフトも披露している。
「WRCはもちろん、ダカールラリー参戦チームは、厳しいグラベル路でマシン鍛えるため、ここシャトー・ラストゥールにくるのです。911が一般的な舗装路で走ってくれることは理解していましたが、オフロードでもこれだけ優れたパフォーマンスを発揮してくれたことに、心から驚きました」
寒冷地を舞台にバルター・ロールがドライブ
2度のWRCドライバーズチャンピオン、バルター・ロールは、スウェーデンのアリエプローグ(Arjeplog)にある、広大な寒冷地テストコースで、911 ダカールをドライブ。凍結湖の厚い氷や圧雪路面を走行することで、より実際の走行条件に近いコンディションでのデータを得ている。
雪上では路面μが低いため、トラクションとステアリングの精度が試されることになった。雪上でも、オフロードでも、911を名乗る限り、正確なスタリングからのフィードバックが求められる。ポルシェのブランドアンバサダーを務めるロールは、911 ダカールの完成度に感銘を受けたようだ。
「とにかく、911 ダカールはドライブがとても楽しいことに、まずは驚きました。すべてが正確かつ完璧に作動してくれます。ポルシェのドライバーは、実際に自分で運転するまで、この素晴らしいパフォーマンスが信じられないかもしれません」
砂漠地帯で発揮された911 ダカールのポテンシャル
911 ダカールは、砂壁が聳え立つ砂漠でも、その実力を証明しなければならなかった。ドバイとモロッコで行われた砂漠テストでは、ポルシェの開発ドライバーたちが、容赦なくこのオフロードスポーツカーに負荷をかけている。
最高気温45℃という厳しいコンディション下、911 ダカールは50mの落差がある険しい砂丘を舞台に、何度も何度も走りを繰り返した。911/718モデルライン担当副社長のフランク・モーザーは、砂漠地帯でのテストを次のように評価した。
「911 ダカールは砂漠でも圧倒的なパフォーマンスを発揮しましたね。このようなコンディションにおいて、911 ダカールはそのコンセプトの利点を最大限に生かすことができます。低重量、高い最低地上高、パワフルなリヤマウントエンジン、そしてショートホイールベースの組み合わせは、爽快なドライビングエクスペリエンスを実現しました。私自身も砂漠でのテスト走行で、それを体験することができました」
ベルクマイスターやカーンも完成度に太鼓判
ポルシェのブランドアンバサダー、ヨルグ・ベルクマイスターも911 ダカールをテスト行っており、グラベルとアスファルトの両方で、911 ダカールのドライビングダイナミクスに驚かされている。
「これだけの地上高と全天候タイヤを履いた車両が、アスファルトでもノーマルのポルシェ 911と変わらないフィーリングを得られるとは思っていませんでした」
開発ドライバーを務めたラース・カーンも、911 ダカールの完成度を絶賛した。
「最初は911 ダカールを限界までプッシュする勇気がなかったんです。でも、グラベル路面でのハンドリングには心から満足しています。ABSもグラベルでのブレーキングに最適化されていますし、オフロードタイヤのトラクションの高さには誰もが驚かされるでしょう。とにかく運転するのが楽しくなるクルマです」