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Renault 5
大量生産前のプロトタイプ製造拠点
パリ近郊にあるルノー・テクノセンター内にひっそりと佇むある建物には、関係者以外の立ち入りが厳格に禁止されている。たとえ、関係者であっても携帯電話などのモバイル機器を持ち込むことは絶対に許されていない。
25年前、テクノセンター内に設立されたグローバル・プロダクション・エンジニアリング・センターは非常にユニークな存在だ。ルノーは本格的な生産ラインに加えて、プロトタイプ用生産ラインを持つ数少ない自動車メーカーであり、ここはその中核施設となる。
グローバル・プロダクション・エンジニアリング・センターのプロトタイプ用生産ラインでは、実際の製造工程を再現することが可能で、将来の生産モデルのベースとなるプロトタイプが製造されてきた。本格的な大量生産における組立工程を検証し、開発部門と歩調を合わせながら運営されている。
欧州の公道でテストが続く新型ルノー 5
新型「ルノー 5」は、フランス北部のドゥーエ工場で生産を予定。大量生産を開始する前に、プロトタイプ用生産ラインにおいて、まずは先行テスト車両が製造される。この施設では、将来市場投入されるルノーの全市販モデルのテスト用車両が製造されてきた。
初代サンクや、初代クリオを思わせる台形シルエットを持つ新型「ルノー 5」は、ルノー・日産アライアンスによって開発されたEV専用プラットフォーム「CMF-EV」がベース。まず最初に、生産仕様を技術的に再現したプロトタイプ「ミュール(mules)」が製造された。ミュールは開発・検証プログラムの一環として、すでにスウェーデンのラップランドなどにおいて、テストが終了している。
現在、プロトタイプ用生産ラインでは、市販仕様のデザインが採用された先行テスト用プロトタイプを製造。デザインを隠すように厳重なカモフラージュが施されたされた先行テスト車両は、最終調整を行う前、主にヨーロッパの公道を中心に様々テストプログラムが実施される予定だ。
同時進行で行われる生産設備の検証作業
プロトタイプ車両によるテストと同時進行で、グローバル・プロダクション・エンジニアリング・センターのスペシャリストと、ドゥーエ工場の製造担当チームは、本格的な大量生産に向けた製造プロセスを確認作業を行う。このタイミングで、使用されるツールやパーツのロジスティクスなどの検証も実施される。
ルノー・テクノセンターは、ルノー 5の開発チームのラボに隣接しているため、テストや検証作業で生じた疑問点は、現場で直接、迅速に対処することができるという。
グローバル・プロダクション・エンジニアリング・センターにおいて、新型ルノー 5の先行プロトタイプは60台以上も製造される。これらの車両は、極寒地や酷暑地、山岳路などの過酷な条件下において徹底的な長距離テストに使用され、最終仕様に向けた様々なデータや知見が、開発チームへとフィードバックされる。