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Porsche Macan
実走テストとバーチャルテストの組み合わせ
2013年の初代デビューから10年以上を経て、マカンはフル電動モデルの2代目へと進化する。アウディと共同開発した「プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック(PPE)」を採用した最初のポルシェ製モデルとして、マカンは完全にゼロから新規設計された。
先代モデルからのキャリーオーバーができないため、全コンポーネントとシステムの完璧な調整が必要となり、テストプログラムはこれまで以上に綿密に実施。ポルシェは従来どおりカモフラージュ偽装が施されたプロトタイプでの実走行テストを重視しつつ、同時にバーチャルと風洞施設を使ったシミュレーションを行った。
マカン担当副社長のヨルグ・ケルナーは「ニューモデルを開発するときは、常にドライビングダイナミクスと、その精度を追求します。それがポルシェに根付いたDNAです。そして効率性とデザインも非常に重要な要素です」と説明する。
マカンの個性とエアロダイナミクスの両立
新型マカンの開発において課題となったのが、成功を収めたマカン・シリーズの商品アイデンティティを維持しながら、同時にフル電動モデルとしての高い効率性と航続距離を確保すべく、必要とされる空力的要件を満たすことだった。
そのため、開発段階において、デザイン部門とエアロダイナミクステスト部門における、両チームが緊密に協力し合うことが重要だった。スタイル・ポルシェのエクステリアデザイン担当ディレクターを務めるピーター・ヴァルガは次のように振り返った。
「我々が掲げるデザイン原則と、空力エンジニアから与えられた仕様の間に、最適なつながりを見つけることは、確かに大きな挑戦となりました。美しいエクステリアと機能の最適なバランスを見つけるべく、私たちは1ミリ単位で協力を続けたのです」
この密接なチームワークにより、ポルシェはデザインDNAと航続距離に最適化されたエアロダイナミクスを持つ、美しいデザインを完成させた。印象的なマカンらしいシルエットだけでなく、「ポルシェ・アクティブ・エアロダイナミクス(PAA)」などの空力コンポーネントなどによって達成された。
空力担当ディレクターのトーマス・ウィーガンドは「新型マカンに採用されたアクティブ・エアロダイナミクス・エレメントはすべて航続距離に大きく貢献しています。自動で展開するリヤスポイラー、そしてフロントエアインテークにアクティブ冷却フラップを導入しました」と付け加えた。
Cd値0.25により実現した航続距離500km
アンダーボディにもアクティブ・エアロダイナミクスを採用。リヤアクスル周辺も含めて、アンダーフロアはレーシングカーのようなフラットボトム形状が導入された。柔軟性を持ったフェアリングは、悪路走行時に姿勢が乱れた際も空気抵抗を低く抑えることができるという。
ここに流線型で大部分がクローズド形状の専用ホイールや、空力に最適化されたタイヤウォール部を組み合わせることで、さらに空力効率を引き上げている。
通常のクルージング時、新型マカンは自動的にその時点での理想的な空力形状を維持。リヤスポイラーがエコポジションへと移動し、エアフラップが閉じて車高が下げられる。この状況において、トーマス・ウィーガンド率いるエアロダイナミクスチームは、Cd値0.25という驚異的な空力レベルを実現した。現行マカンがCd値0.35であることを考えると、いかに優れた数値か理解できるだろう。この極めて優れた空力効率により、新型マカンのWLTP基準による航続距離は、すべての仕様で500km以上となるという。
あらゆる環境に対応する充電システム
新型マカンは、フロントとリヤアクスルに、最新世代の永久励磁型PSMモーターを搭載。最高システム出力450kW以上を発揮する高効率電気モーターは、アンダーボディに搭載された総容量100kWhのリチウムイオンバッテリーからエネルギーが供給される。
プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック(PPE)の800Vアーキテクチャーは、高性能な急速充電に対応し、開発プロセスの一環として充電に関するテストも世界中で行われた。
「私たちがマカンを投入するメイン市場では、それぞれ異なる充電基準が導入されています。そのため、テストにおいては、マカンのプロトタイプでは、異なる場所、異なるシチュエーションで充電状況をチェックしました。そして、必要に応じて技術を適応させています。充電はいつでもどこでも機能しなければならないからです」と、ヨルグ・ケルナー。
様々な環境下で350万km以上を走行
ポルシェは新型マカンを、ポルシェらしいドライビングダイナミクスと、親しみやすいステアリングフィールを持つよう開発。様々なテストプログラムは、新たに開発されたコンポーネントやシステムを調整し、動作の安定性と相互作用の円滑な機能を確保することが目標に掲げられた。
耐久テストにおいては、カスタマーが経験できないような過酷な運転条件下での走行を実施。カモフラージュが施された新型マカンのプロトタイプは、これまでに世界中のテストコースや公道で350万km以上のテスト走行を行っている。
「私たちはあらゆる温度範囲をカバーしています。スカンジナビアのマイナス30℃から、カリフォルニアのデスバレーで経験したプラス50度まで新型マカンは経験しています。もちろんSUVはどんな路面でも走らなければなりません。そのため一般道だけでなく、オフロード、砂利道、雪道、氷上でもテストを行ったのです」と、ヨルグ・ケルナーは明かした。